■キャッチコピーは「天才タマゴ」
トヨタのエスティマと言えば大型ミニバンを代表する車種であり、
現行の3代目モデルとなってから9年以上が経過しているにも
関わらず、2014年の新車販売台数は2万5千台以上を記録する
大人気車種です。
「天才タマゴ」というキャッチコピーの通り、丸みを帯びた近未来的な
ボディで高性能ニューコンセプトサルーンとして1990年に販売が
開始されました。
当時日本の自動車市場は後に訪れるミニバンブームの前夜にあり、
ミニバンと言えば日産のバネットセレナに代表される5ナンバー
サイズに収まるキャブオーバー型が主流でした。
そんな中登場したエスティマは驚きを持って迎えられましたが、
日本市場でも海外市場でも支持を得ることは出来ませんでした。
日本で当時人気のバネットセレナの標準グレードが130万円台
だったのに対して、エスティマは最も廉価なものでも300万円弱と
100万円以上も高価であり、「性能は申し分無し、でも買うのは・・・」
と敬遠されたのです。
またエンジンについても、他メーカーの競合車種がV型6気筒
エンジンを搭載しているのに対してエスティマは直列4気筒エンジン
を搭載しており、高価な割りに静粛性や高級感に欠けるという
評価を受けます。
プレビアという車名で欧米を中心に海外でも販売しましたが、
ヨーロッパでは日本同様に高価すぎる、アメリカでは2.4Lの
エンジンでは非力だということから販売台数は伸びませんでした。
その後5ナンバー枠に収まる「エミーナ」や「ルシーダ」の販売を
開始したり、廉価グレードを追加したり、さらにはマイナーチェンジを
行い外装を一新してエアロパーツを装着した「アエラス」も登場
させました。
1994年10月に販売が開始されたホンダ・オデッセイの大ヒットに
より、日本の自動車市場に空前のミニバンブームが到来しますが、
エスティマの販売台数が大幅に向上することはありませんでした。
またオデッセイや日産が1997年に販売を開始したエルグランド
などのライバル車種が排気量がより大型のエンジンへ移行する中、
エンジンルームの狭さ故に大型化への対応が出来なかったことも
苦戦を強いられた原因と言えます。
■初代の雪辱を果たす
2000年1月にフルモデルチェンジが行われ、初代から丸みを
帯びたボディを踏襲しつつも先鋭的なシルエットに変更されました。
車体のサイズは初代とほぼ同じであったもののエンジンの大型化
にも対応し、低床化することで居住性の向上も図られ、さらに両側
スライドドアやセンターメーターが採用され、一部グレードでは
スライドドアが電動化されました。
このフルモデルチェンジにより、2000年には新車販売台数でトヨタ
第3位を記録するなどユーザーの高い支持を受け、初代の雪辱を
果たすとともに他メーカーのライバル車種を抜き去ることにも成功
しました。
2001年にはハイブリッドモデルも追加され、後に三代目へモデル
チェンジがなされてからも中古車市場において高い人気を誇った
ことから、この二代目モデルの完成度の高さを伺い知ることが
出来ます。
2006年1月に再びフルモデルチェンジが行われ、三代目モデルが
登場します。
二代目モデルをより進化させ、そのシルエットも丸みを帯びつつも
さらに先鋭的なものに変貌しました。
二代目と同様にハイブリッドモデルも用意され、プリウスと
同システムが取り入れられたことで燃費面のみならず走行面でも
飛躍的な向上を遂げました。
■さらなる未来へ
2006年のフルモデルチェンジ以降、定期的に小規模なマイナーチェンジや特別仕様車の投入などが行われてはいるものの、
丸9年経った現在でも4代目エスティマは登場していません。
その背景にはエスティマの現行モデルが売れ続けていることと、
2014年10月に発表された新型ミニバン「エスクァイア」の存在が
あるようです。
エスクァイアは、5ナンバーミニバンでありトヨタで言えばノアや
ヴォクシーと同じカテゴリーに入りますが、その価格帯はノアや
ヴォクシーの5ナンバーミニバンとアルファードやヴェルファイアの
大型ミニバンとの間というこれまでエスティマが担ってきた価格帯に
属することから自動車業界ではエスティマの後継車と見られて
いたのです。
しかしトヨタの開発担当者は「エスクァイアはエスティマの代わりでは
ない」と明言しており、さらにこれまでは噂の域を出なかった
新型エスティマが開発されているようなのです。
正式に発表されたわけではありませんが従来の2.5Lのガソリン
仕様とハイブリッドモデルに加えて、2014年に販売開始された
「ミライ」のFCV(燃料電池車)システムが搭載されたモデルが
開発されているようです。
これまで新型モデル登場の度に世間に大きな衝撃を与えてきた
エスティマですが、次回の4代目エスティマも我々の度肝を抜いて
くれるに違いありません。