■父親名義の自動車を処分
年齢を重ねると、親が存命中か否かに拘わらず、親名義の自動車
を処分する機会が訪れることになると思います。
自分名義の自動車の処分であれば、廃車であろうと売却であろうと
何ら問題なく出来ますし、経験してらっしゃる方も多いことでしょう。
しかし、親とは言え自分の名義でない自動車を処分するには
どうすれば良いのかわからない場合も多いのではないでしょうか。
名義人である親が存命中、存命しているが海外居住している、
存命しているが認知症である、死亡のそれぞれのケースで対応が
変わります。
基本的には、自動車の所有者を自分に名義変更してから廃車なり
売却の手続きをすることになりますが、それぞれに必要となる
書類が少し違ってきます。
■親が存命中の場合
自動車の名義人である親が存命中であるならば、通常自動車の
処分は親自身が行うでしょうが、親に買ってもらった自動車で
あったり、任意保険料の関係から、所有者は親で使用者が自分と
なっていることもあると思います。
存命中であるならば、名義変更の手続きに必要となる印鑑証明や
実印を押した委任状と譲渡証明書を用意してもらうのは、離れて
暮らしていたとしても郵送してもらうなど、それほど難しいことでは
ないと思います。
売却する場合には名義変更を含めた手続きを買取業者などに
依頼することにより、また廃車の場合は陸運局で自ら名義変更と
抹消登録の手続きをすることによって自動車を処分することが
出来ます。
ただし、買取業者などに買取ってもらう場合には、査定の段階で
車検証と自賠責保険証が必要となり、これらの名義が買取を
依頼する本人と違う場合には印鑑証明、委任状、譲渡証明書の
提出を求められることもあるので気を付けておきましょう。
また廃車の場合には、抹消登録を前提とした名義変更であるため、
車庫証明と自動車税の申告書は必要ありません。
■親が海外居住の場合
もし、自動車の名義人である親が海外に住んでいる場合には、
手続きなどが複雑になるわけではありませんが、必要となる書類が
変わります。
委任状や譲渡証明書が必要であるのは変わりませんが、それらに
実印を押すのではなくサイン又は拇印を付し、印鑑証明の代わりに
サイン証明又は拇印証明が必要となります。
サイン証明や拇印証明は居住地の大使館や領事館などの日本の
在外公館で取得出来ます。
また住民票の除票も必要となりますので、親が日本で最後に
住んでいた住所の役所において取得しておいてください。
■親が認知症の場合
もし、自動車の名義人である親が認知症と診断されている場合は
少しややこしくなります。
認知症患者の印鑑証明や委任状などは、本人の正常な判断に
よって発行や作成がなされたものと判断されず、無効となって
しまいます。
そこで成年後見人を立てて、委任状や譲渡証明書に所有者本人の
署名押印に加えて後見人の署名押印を付すことで処分が可能と
なります。(後見人の印鑑証明も必要となります。)
ただし、成年後見人によって自動車が売却される場合には
無償譲渡が認められないなど様々な条件がありますので、
専門家へ相談することをおすすめします。
また成年後見人には、被後見人の財産管理の他に療養看護の
義務も負うことになるので、自動車の処分その一事だけをもって
後見人なるのではなく、その後の看護などのことも十分に考慮した
上で判断するようにしましょう。
■親が死亡の場合
もし、自動車の名義人である親が死亡した場合には、その自動車に
価値があろうと無かろうと、まず相続をするということになります。
その自動車を相続する権利は、配偶者とその子供たち全員に
あります。
自分以外に相続権を持った人がいない場合には、死亡した親の
除籍謄本と相続人である自分の戸籍謄本、印鑑証明さらに
保管場所が変わる場合には車庫証明も必要です。
相続権を持つ人が複数人いる場合には、全員が記載されている
戸籍謄本や全員分の印鑑証明が必要となり、さらに遺産分割
協議書を作成する必要があります。(複数人による共同相続の
場合は、遺産分割協議書は必要ありません。)
ただし婚姻等によって除籍され、それが確認出来ない場合には、
現在の戸籍謄本に加え原戸籍謄本も必要となるので注意して
ください。
■トラブルにならないように
以上のように、自動車の所有者である親が存命中で、はっきりとした意思確認が可能であれば、その自動車の処分はそれほど難しく
ありません。
しかし、後見人や相続などが必要になると問題がややこしくなります。
特に親とは言え、認知症患者の介護は並大抵のことではないので、
安易に後見人になるのではなく、一度関係機関等に相談して他に
解決策が無いかを確認してみましょう。
また相続に関しては、死亡した親に婚外子などがいた場合には
その子にも相続権がありますので、後でトラブルにならないように
親の出生から死亡までがわかる戸籍や原戸籍の謄本を全て
取り寄せて相続人を確定させるようにしてください。
自動車の処分という小さな問題から解決困難な大きな問題を
生まないように、家族親族による話し合いだけでなく、弁護士や
司法書士などの専門家やその他関係機関などへの相談も必要では
ないでしょうか。