■元旦那の自動車
離婚をする際に、慰謝料の一部(又は全部)として自分名義の自動車を相手に渡す、
ということが少なからずあるようです。
最初は何も気にせず乗っていたけど、乗っているうちに段々離婚した相手のことを思い
出して・・・なんてことは無いかもしれませんが、何年か経つと自動車の乗り換えや
廃車などを考え始めることもあると思います。
しかし、離婚の際に自動車の名義変更をせずに元配偶者名義のままで乗っている場合は
簡単に買い換えたり、廃車したり出来ません。
このようなケースは、特に女性は自動車のことに疎い人が多いので注意してください。
■立派な財産
自動車は陸運支局という国土交通省の機関に一台ずつ登記されており、民法上で
不動産に準ずる扱いを受けたりすることある立派な財産なのです。
よって、元配偶者とはいえ現在は他人の名義になっている自動車を承諾もなしに処分する
ことは、横領や文書偽造などの犯罪となり、さらには損害賠償請求をされる可能性まで
あります。
とはいえ、自動車を処分するには所有者の実印と印鑑証明が必要なので、一般の人が
それらを偽造してまで、それほど価値の無い自動車を処分するとは考えにくいですが。
■処分するために
しかし自動車にも寿命はありますし、いつまでも置いておくことが出来ない場合には
どのようにすれば処分できるのでしょうか。
元配偶者の所在がはっきりしており連絡が取れるのであれば、名義変更や廃車の
手続きに必要な書類に自筆での署名と実印を捺印してもらい、印鑑証明を取ってきて
もらえば何の問題もありません。
実際は離婚した相手と顔を合わせて、これらのことをお願いするということ自体が一番
ハードルが高いような気もしますが・・・。
しかし、元配偶者の所在が分からず連絡も取れない場合には、司法書士や弁護士などに
不在者の調査依頼をし、所在を突き止めてもらった上で、手続きに必要な書類を揃え
なければならないので、多大な時間と費用が掛かります。
この場合は、離婚した相手と直接顔を合わせなくても良いかもしれませんが、離婚後に
連絡も取らず、所在も知らせていない相手にすんなり協力してくれるかどうかということが
一番の問題になります。
さらに万が一、司法書士や弁護士などに依頼しても所在が分からないと、何の問題も無く
自動車を処分することはほぼ不可能となります。
■処分する方法
後々に問題が残るのであまりオススメは出来ませんが、他人名義の自動車であっても
処分する方法はあります。
まず最初に、一番大事なこととして自動車の「所有者」が誰であるかを確認する必要が
あります。
元配偶者の自動車とはいえ、ローンなど利用して購入した場合には所有者が自動車
販売店やクレジット会社になっていることがあります。
通常は、ローンを完済した時に販売店やクレジット会社に所有権の解除をしてもらうか、
書類だけ揃えてもらって自分で陸運支局に行き解除の手続きをした上で自動車の
名義変更をします。
しかし、ローンを完済しても販売店やクレジット会社が勝手に所有権解除の手続きを
してくれるわけではないので、名義変更しないままになっている場合もあります。
そこで、車検証を確認して自動車の所有者が自動車販売店やクレジット会社のままに
なっていれば、連絡をしてローンの有無を調べた上で所有権解除の手続きをして
もらいましょう。
それから自動車の名義を自分に変更すれば、この場合は何の問題も無く、廃車であろうと
売却であろうと手続きをすることが出来ます。
では所有者は元配偶者になっておりかつその所在も分からない場合にはどうすれば
良いのでしょうか。
このような場合は、自動車を廃車にすることも売却することも出来ませんが、解体する
ことは出来るのです。
「廃車」と「解体」は一緒じゃないのかと思われるかもしれませんが、ここでの「廃車」とは
陸運支局において自動車の登記を抹消することで、「解体」とは文字通り車体をスクラップ
にすることです。
即ち、自動車の登記はそのままにして、車体だけを解体してしまうのです。
まず、自動車のナンバープレートを外し(錆び付くなどして出来ない場合は業者で外して
もらってください)、解体業者に依頼して自動車を引き取ってもらい、スクラップにします。
本来であればこの後に、外したナンバープレートと必要書類を陸運支局に提出、自動車の
登記を抹消して「廃車」が完了したことになるのです。
しかし登記の抹消が出来ない場合には、解体業者から「解体証明書」をもらい、それを
車検証とともに県税事務所などに提出し自動車税を止める手続きをします。
そのまま車検の更新や所有権の移転等が無ければ、5年ほどで陸運支局が「職権抹消」
を行って自動車の登記が抹消されます。
ここで注意しなければならないのは、おそらく陸運支局が「職権抹消」する前に所有者に
通知がなされるはずです。
元配偶者に承諾無く解体していた場合には、この通知によって、元配偶者から自動車の
返還を要求されるかもしれません。
そうなると勝手に解体したために色々と問題が起こるので、この方法はあまりオススメ
出来ません。
まあ自動車の所有者である元配偶者の元に自動車税納税通知書が毎年届き続けるので、
これらの問題が起こる前に相手方から名義変更の依頼がありそうですが・・・。